Web3に対する考え

CLCのアップデートをWeb3の未来に対する私の考え

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## Why blockchain

Web3、ブロックチェーンというものが世の中に広く知られるようになったのは、Ethereum誕生後の2016,2017年あたりからだったかと思います。私自身がブロックチェーンに触れたのもちょうどそのころでしたが、2024年になった今でもなぜWeb3やブロックチェーンがこの世に必要なのか、という点がいまいちピンと来ていない方が大多数なのではないかと思っています。この記事では「ブロックチェーンを使う意味」と「web3は今後どのように発展していくのか」というテーマについて、現状の自分の考えをまとめていきたいと思います。

## そもそもブロックチェーンとは

そもそも、ブロックチェーンというのはCypherpunkという、暗号技術を用いて個人のプライバシーを大企業や政府から守ろうという思想を持ったコミュニティの中から生まれたものであり、今でもブロックチェーンのコアな開発者はその思想を強く受け継いでいると感じます。

Etheruemの創業者であるVitalik Buterinも、かつて "I saw everything to do with either government regulation or corporate control as just being plain evil.(政府の規制や企業のコントロールに関係するあらゆるものは純粋に悪だと考えていた)"ということを語っていますし、BitcoinやEthereumのコアな開発者の人たちは、いかにプライバシーやデータ管理の権限を大企業から市民のもとに取り戻すか、というテーマについては常に議論している印象があります。

参考: [Ethereum co-founder on why he got into crypto: Empower the little guy, ‘screw’ the big guy — ‘they already have enough money’](https://www.cnbc.com/2021/05/18/why-ethereum-founder-vitalik-buterin-got-into-crypto-bitcoin.html)

2022年にVitalikが発表した[Decentralized Society](https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4105763) の論文の中でも、Privacy というのは非常に重要な要素の一つとして記載されています。最近盛り上がりを見せている、分散型SNSのプロトコルであるfarcasterも、分散型SNSの構築によって企業によって一元的(独占的)に人々の思想や行動が管理される今の現状を変えることを重要なサービスのコンセプトとしています。

参考:

[Sufficient Decentralization for Social Networks](https://www.varunsrinivasan.com/2022/01/11/sufficient-decentralization-for-social-networks)

[Farcaster document](https://docs.farcaster.xyz/)

つまり、ブロックチェーンという技術が誕生し広がってきたそもそもの背景は、プライバシーやデータの主権を大企業や政府から個人に移すことにあります。

## どうやって個人がプライバシーやデータを管理できるようにするのか

ブロックチェーンという技術を用いてプライバシーやデータを個人が管理できるようにすることが一つの大きな目的と言いましたが、具体的にそれはどのようにして実現されるのでしょうか。

ここではEthereumやBitcoinなどのパブリックブロックチェーンを前提として話をしますが、一般的にブロックチェーンには下記のような特徴があります。

1. アカウントは、氏名やEmailといった個人情報に紐づく形ではなく、アドレスによって表現される

2. アカウントに紐づくあらゆる資産やデータは、アドレスと対応する秘密鍵の持ち主のみコントロールできる

3. 誰もがアカウントを作成することが出来る

1つ目として、皆さんもご存じかと思いますがブロックチェーンは通常のサービスとは異なり、アカウントを作成する際にEmailや氏名、電話番号のような個人情報を登録する必要はなく、アカウントという概念は公開鍵暗号の仕組みを利用して生成されたアドレスによって表現されます。一般的にブロックチェーンのトランザクションはオープンであるという特徴がありますが、それはアドレスに紐づく情報がオープンになっているという意味であって、直接的に個人情報がオープンになっているという意味ではありません。つまりブロックチェーンは、オープンでありながらも、利用者の個人情報は一切開示されない仕組みになっています。

2つ目の重要な特徴として、ブロックチェーンにおいては、アドレスに紐づく情報をアドレスのオーナーが自分でコントロールすることができます。例えばアドレスに紐づいた資産やトークンなどの情報は、アドレスのオーナーのみが変更・移転することができます。これはブロックチェーンにおいては情報の管理者がアドレスのオーナーであることを意味しています。ブロックチェーンは現時点ではデータがオープンになっていることが一般的ですが、この性質を利用することで、ユーザーが望む情報だけ開示する、選択的プライバシーのような仕組みを実装を実現することも可能です。

そして3つ目の特徴として、ブロックチェーン上では、誰でも自由にアカウントをいくつでも作ることが出来ます。この性質によって、例えばユーザーは自分の管理するアドレスを複数作ることで、用途ごとにアカウント情報を分けるといったことも可能になります。これによってデータ管理の自由度が大きく向上します。

このように、ブロックチェーンが今後多くのアプリケーションの基盤となっていくことで情報の管理権限の多くが個人に移ることになるため、企業や政府はこれまでのように情報を独占して人々をコントロールすることが難しくなっていき、データの主権がより個人へと移っていきます。

## 具体的にユーザーにとってどんな恩恵があるのか

プライバシーやデータ管理の権利が個人に移るといっても、それが実際どのように自分にとって役に立つのでしょうか。

まず前提として、個人がすべてのデータを管理することが必ずしも良いことばかりではないと思いますし、政府や大企業が多くのデータを管理していることは必ずしも悪いことではなく、どちらにもメリット・デメリットは必ず存在します。

例えば政府や大企業が善意をもってそのデータを扱ってくれる限りにおいては、むしろ一元的に管理してくれることによって多くの恩恵を受けていることも事実です。Appleのデバイス同士が簡単に連携出来たり、YoutubeやAmazonなどが自分好みの商品やコンテンツを的確にお勧めしてくれるのも、彼らが一元的にデータを管理してくれているおかげである部分もあると思います。

上記のような話は前提としたうえで、データの主権が個人に移ることによってどんなことがおこるのか、ということについて買いていきたいと思います。

## 同じデータ、複数のサービス、独占は出来ない

先ほども述べたように、ブロックチェーンの世界ではデフォルトでデータがオープンな状態になっているため、ブロックチェーン上のデータは基本的に誰でもアクセス可能な状態になっています。そのため、同じデータを複数の企業が利用(参照)することができます。これによって、今の(Web2の)サービスのように、データとサービスが紐づいた状態ではなくなり、1つのデータに対して複数の企業がサービスを提供することができるようになるため、GoogleやFacebook、Microsoftなどのような巨大企業が市場を独占するということが非常に難しくなります。

例えば、farcaster は [Sufficient Decentralization for Social Networks](https://www.varunsrinivasan.com/2022/01/11/sufficient-decentralization-for-social-networks) というコンセプトを実現する分散型のSNSですが、この記事の中で下記のようなことが書かれています。

※chatgptを用いて翻訳しています。原文が見たい方はリンク元の記事に飛んで読んでみてください。

> 中央集権的なソーシャルネットワークは、ユーザーが自分のオーディエンスに到達する能力を厳密に制御しています。彼らは特定の投稿を強調し、他の投稿を抑制してページビューや広告収益を増やします。しかし、確実にオーディエンスに届くことは、ユーザーにとって価値があります。例えば、イーロン・マスクのTwitterのフォロワー数は、彼の企業が大衆から数十億ドルを調達するのを容易にします。人々が企業が自身の利益のためにアクセスを制限していることを発見すると、彼らは理解できるように不満を持ちます。彼らは、企業が自分のアイデンティティを制御し、救済手段なしにネットワークから彼らを排除することができることに気付いたときにさらに怒ります。

>

> ネットワークはまた、数百万の初期ユーザーをもたらした開発者とも摩擦のある関係を築いてきました。開発者は代替クライアントを構築し、UIパラダイムを発明し、数十億ドル規模のゲーム会社さえ立ち上げました。しかし、成長するにつれて、ネットワークはもはや開発者を必要としないと気付きました。ほとんどのユーザーはロックされており、彼らが一部のオーディエンスを失うことを恐れて去ることはありませんでした。開発者向けのAPIは収益を減少させ、複雑さを増加させる負担になり、制限されたり完全に停止されたりしました。今では、企業内で政治的な権力を持つ人々だけが新しいアイデアを試すことができるようになっています。

>

>分散型のソーシャルネットワーキングプロトコルは、ネットワークへのオープンなアクセスを保証することで、このダイナミックを変える可能性があります。企業は、Gmailが電子メールやGithubがGitで行っているように、サービスを提供することでまだ利益を上げることができます。しかし、アクセスの分散化は、彼らが独占的でユーザーを無視することができないことを保証します。最高のアイデアが対等な立場で競争できる市場志向のアプローチを生み出します。

実際にfarcasterは、SNSの基盤となる部分をプロトコルとして開放し、実際にユーザーが使うアプリケーションの部分をクライアントアプリケーションとして分離しています。これによって、ユーザーは同じデータを利用する複数のアプリを自由に選択することが出来るようになるため、従来のように一つの企業が市場を独占し運営者が独善的にサービスを提供することが非常に難しくなります。

Web3の世界におけるサービスの一番のポイントはこの点にあると感じています。データの主権が企業から個人に移ることで、ユーザーはサービスを選択する権利を持つことが出来るようになり、企業はよりユーザーのニーズに沿ったサービスを提供する必要があります。また市場の独占が難しくなるため、より多様なサービスが誕生する可能性があります。

## オンライン経済圏の拡大

もう一つブロックチェーンがもたらす重要な側面として、インターネット上の匿名経済圏を拡張する、ということがあります。ブロックチェーンは匿名のアドレスという概念に紐づいて様々なデータが管理されるため、匿名でありながら多くの情報をアカウントに蓄積することができます。

※ここで言う匿名というのは「匿名でもよい」という意味であって必ず匿名でなければならないという意味ではないです。

2022年にVitalikが共著で発表した [Decentralized Society: Finding Web3's Soul](https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4105763) という論文の中では、そういった情報のことを"Soul"と表現していますが、ブロックチェーンのアカウントに資産やアプリの履歴、SNSの情報などが溜まっていくにつれて、ブロックチェーン上の匿名人格が形成されていきます。そしてこれは従来のSNSのように企業の裁量一つで簡単に失われてしまうものではなく、自分自身がデータの管理権限を持つため、より強固なアイデンティティとなる可能性があります。

こうしたオンライン上の匿名アイデンティティが形成されていくにつれて、ブロックチェーン上で信用情報をもとにした様々な取引が実現できるようになる可能性があります。例えば、お金の貸し借り、企業の採用、さらにはブロックチェーン上での組織構築(DAO)など、現在のWeb3の世界からは想像もできないような複雑なサービスや組織をオンチェーンで展開できる可能性があります。

ちなみにDAOについては、dydx の大木さんがXで投稿していた[レポート](https://twitter.com/dYdXJapan/status/1769565118738907176) で下記のようなことを言っていましたが、これこそがWeb3で生まれる匿名インターネット経済圏のことだと思います。

> クリプトの世界は、Web2のプレイヤーが「Web3的な要素」を取り入れて進化するという話ではない。クリプトの世界は、Web2の世界とは非連続的であり、全く新しい世界、全く新しい住民たちのストーリーだという話をした。クリプトとは「進化」ではなく「革命」であり、基本的には既存のシステムに不満を持つ人々によるレジスタンスだ。そしてDAOとは一度も会ったことがない人でも、同じ志を持つ同志であればオンライン上で協業できる、いわばレジスタンスの基地だ。

これまで、特にインターネットが出来る前の私たちの経済活動は、住んでいる土地や言語に強く縛りを受けるものでしたが、インターネットが世界中に広まったことによって、グローバルにビジネスや組織を展開することが容易になりました。ブロックチェーンやWeb3の考え方というのはこれをさらに推し進めるものだと私は理解しており、Web3の世界ではオンラインの匿名経済圏がベースとなりますから、「グローバルに展開できる」などという考え方ではなく「そもそもどこに住んでいるか、何人かなどといったことは関係なく、最初からグローバルであることが当たり前」という感覚がより正しいと思っています。

## CLC の今後

CLCは現在Web2的な仕組みによって運営されていますが、今後はこのようなWeb3によってもたらされる未来にむけて、学習データをチェーン上に構築していくプラットフォームを目指していきたいと考えています。近日中に大きなアップデートを発表する予定ですので、楽しみにしていていただければと思います。


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