2023年4月に発表されたメタ分析によると、大気汚染曝露は認知症リスクを13%増加させ、特定の大気汚染物質(PM2.5、PM10、CO、NO2、NOx)の曝露は認知症リスク増加と関連していることが示されました。
Summary A meta-analysis published in April 2023 showed that air pollution exposure increased dementia risk by 13% and that exposure to certain air pollutants (PM2.5, PM10, CO, NO2, NOx) was associated with increased dementia risk.
文献
Tang J, Chen A, He F, Shipley M, Nevill A, Coe H, Hu Z, Zhang T, Kan H, Brunner E, Tao X, Chen R. Association of air pollution with dementia: a systematic review with meta-analysis including new cohort data from China. Environ Res. 2023 Apr 15;223:115048. doi: 10.1016/j.envres.2022.115048. Epub 2022 Dec 16. PMID: 36529331.
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1260万人のメタ分析
1260万人のコホート研究のメタ分析(Tang, 2023)となっています。
参加者: 12,603,739人の参加者と475,937人の認知症症例を含む15の研究および中国の2つのコホート研究
介入: 大気汚染の曝露(全体的な大気汚染および特定の汚染物質への曝露)
比較: 大気汚染曝露レベルの低い群
アウトカム: 認知症の発症
研究デザイン: システマティックレビューおよびメタアナリシス(コホート研究のデータを使用)
結果:
全体的な大気汚染曝露は認知症リスクを13%増加させた(RR 1.13, 95%CI 1.08-1.19)
PM2.5曝露は認知症リスクを11%増加(RR 1.11, 95%CI 1.06-1.17)
CO曝露は60%増加(RR 1.60, 95%CI 1.39-1.84)
NO2曝露は14%増加(RR 1.14, 95%CI 1.03-1.27)
PM10、NOx、O3曝露では有意な関連は見られなかった
アルツハイマー病のリスクは7%増加(RR 1.07, 95%CI 1.00-1.15)
結果まとめ:
大気汚染で認知症が13%多い
長期間の大気汚染曝露は認知症の原因のひとつとして可能性はあるでしょう。しかし、交絡の影響は無視できないように思えます。
論文では交絡について、以下のように言及されています。
ほとんどの研究で年齢、性別、社会経済的地位、生活様式、BMI、併存疾患など、多くの重要な交絡因子が調整されています。
7つの研究で喫煙が調整されていませんでした。
13の研究でうつ病が調整されていませんでした。
食事(魚や野菜の摂取など)が考慮されていない可能性が指摘されています。
著者らは、一部の研究で重要な交絡因子が調整されていないため、大気汚染と認知症リスクの関連が過大評価されている可能性を認めています。
心血管疾患など、大気汚染と認知症の関係を媒介する可能性のある要因についても言及されています。
屋外の大気汚染測定値を使用していることによる潜在的なバイアスについても議論されています。
より包括的な交絡因子の調整(特に喫煙、うつ病、食事パターン)の必要性が強調されています。
著者らは、これらの限界を認識しつつ、結果の解釈には慎重であるべきだと述べています。
9100万人のメタ分析
2023年にはもうひとつメタ分析(Abolhasani, 2023)が発表されています。こちらは9100万人以上の大規模なメタ分析となっています。概要を確認しておきましょう。
結論: 大気汚染、特にPM2.5への曝露と認知症発症リスクの間に有意な関連が示唆された。
参加者: 40歳以上の成人91,391,296人(うち5,521,111人が認知症と診断)
介入: 大気汚染物質(PM2.5、NOX、NO2、O3)への曝露
比較: 大気汚染物質の曝露レベルの違い
アウトカム: 認知症の発症
研究デザイン: システマティックレビューおよびメタアナリシス
結果:
- PM2.5濃度が1 μg/m3増加するごとに認知症リスクが3%上昇(HR 1.03; 95% CI 1.02-1.05; I2 = 100%)
- NOX濃度が10 μg/m3増加するごとの認知症リスク上昇(HR 1.05; 95% CI 0.99-1.13; I2 = 61%)
- NO2濃度が10 μg/m3増加するごとの認知症リスク上昇(HR 1.03; 95% CI 1.00-1.07; I2 = 94%)
- O3濃度が10 μg/m3増加するごとの認知症リスク上昇(HR 1.01; 95% CI 0.91-1.11; I2 = 82%)
結果まとめ:
PM2.5の関与はあるかもしれない
この結果からは、PM2.5の曝露と認知症発症には関連があるもしれない、ということが示されました。とはいえ、研究数が少なく異質性も高いため、結果の解釈には注意が必要です。
交絡の可能性はあるものの、PM2.5についてはTang, 2023の結果とも一致しており、さらなる研究や対策が期待される分野でしょう。
参考文献
Tang J, Chen A, He F, Shipley M, Nevill A, Coe H, Hu Z, Zhang T, Kan H, Brunner E, Tao X, Chen R. Association of air pollution with dementia: a systematic review with meta-analysis including new cohort data from China. Environ Res. 2023 Apr 15;223:115048. doi: 10.1016/j.envres.2022.115048. Epub 2022 Dec 16. PMID: 36529331.
Abolhasani E, Hachinski V, Ghazaleh N, Azarpazhooh MR, Mokhber N, Martin J. Air Pollution and Incidence of Dementia: A Systematic Review and Meta-analysis. Neurology. 2023 Jan 10;100(2):e242-e254. doi: 10.1212/WNL.0000000000201419. Epub 2022 Oct 26. PMID: 36288998.
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byc (bycomet) Editor, Director & Physician
2007年からブログやツイッターで活動を開始。ウェブマガジン「地域医療ジャーナル」(2015-2023年、有料会員数10,886人月)、オンラインコミュニティ「地域医療編集室」(2018-2022年、累積登録40人)を編集長として運営。2022年にはオンラインプラットフォーム「小さな医療」(登録会員数120人)を運営。
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あとがき
先日の記事でも少し触れましたが、論文要約にはClaude Projects:ひとりジャーナルクラブ(Claude 3.5 Sonnet)を多用しています。
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大気汚染は認知症リスクを高めるーメタ分析から
https://no-lang.com/video/07507494-b7e3-4799-8e1c-51547a8bfabb?type=vod
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byc