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適度な筋トレ習慣のある人は死亡が15%少なかった

適度な筋トレ習慣のある人は死亡リスクや糖尿病・がん・心血管疾患の発症リスクが低かった―こんな研究結果が2022年に発表されています。

Summary People with moderate muscle training habits have a lower risk of death, diabetes, cancer, and cardiovascular disease - the results of such a study were published in 2022.

筋力が低下した人が運動することで、運動能力が向上することがわかってきています。
それでは、運動によって病気は少なくなるのでしょうか。さらには死亡が防げるのでしょうか。

この仮説について検討した観察研究が2022年に発表されています。

観察研究のメタ分析で筋トレと死亡リスクを検討

筋トレ(muscle-strengthening activities: 筋力増強活動)を習慣的に行っている18歳以上の成人は、非感染性疾患の発症や総死亡のリスクは少ないのか、を検討した前向きコホート研究の系統的レビュー・メタ分析 (Momma, 2022)です。

基準に合致する16研究が組み入れられ、それぞれ結果を統合しています。

総死亡は15%少ない

総死亡については、7研究(対象263,058人)の結果が統合され、相対危険 0.85 (95%信頼区間0.79, 0.93)と15%少なかったという結果です。

心血管疾患、全がん(結腸がん、腎臓がん、膀胱がん、膵臓がん)、糖尿病についても同様の傾向がみられました。

Figure by Momma H, used under CC BY 4.0  https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

Figure by Momma H, used under CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

筋トレ時間と死亡の関係はJカーブ

筋トレ10分/週あたりの量反応解析では非線形(Jカーブ)となり、総死亡は40分/週において最も少なく相対危険 0.83 (95%信頼区間 0.79, 0.86)。約140分/週までは相対危険が1.0未満となりました。

心血管疾患、全がんでも同様にJカーブの傾向がみられました。糖尿病については、筋トレ時間が長くなるほど発症が少ない傾向がみられました。

Figure by Momma H, used under CC BY 4.0  https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

Figure by Momma H, used under CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

有酸素運動との組み合わせで効果大きい

有酸素運動と筋トレの組み合わせについて検討した3研究では、両者を併用することで総死亡リスクが40%まで低下 (相対危険0.60、95%信頼区間0.54, 0.67)していたことがわかりました。

観察研究のメタ分析という研究デザインのため、効果の判断には限界があります。特に、介入効果を検討した研究ではないため、交絡因子の影響を受けて効果が過大評価されている可能性があることに注意が必要です。

適度な運動量は?

それでは、適度な運動量とはどの程度になるでしょうか。

今回の研究結果からは、有酸素運動に加えて筋トレは週30-60分程度がよいかもしれない、という解釈になります。

世界保健機関(WHO)から、以下のような運動が推奨されています。

推奨される運動の例(WHO)

例1

  • 中強度の有酸素運動:(早歩きなど)を毎週150分(例えば1日30分、週5日)

  • 筋トレ:すべての主要な筋肉群(脚、腰、背中、腹部、胸、肩、腕)を鍛える活動週2日以上

例2

  • 強度の有酸素運動:(ジョギングやランニングなど)を毎週75分

  • 筋トレ:すべての主要な筋肉群(脚、腰、背中、腹部、胸、肩、腕)を鍛える活動週2日以上

例3

  • 中強度と強度の有酸素運動を同等に組み合わせる、週2日以上

  • 筋トレ:すべての主要な筋肉群(脚、腰、背中、腹部、胸、肩、腕)を鍛える活動週2日以上

いずれの強度の有酸素運動であっても、筋トレは組み合わせて週2回以上行います。過度にならないよう、週30-60分程度にするとよさそうです。

筋トレの内容は、以下のようなものが例示されています。

筋トレの例

  • ウェイトリフティング

  • レジスタンスバンドを使った運動

  • 掘り起こしたりするような重い庭仕事

  • 階段昇降

  • 坂道ウォーキング

  • サイクリング

  • ダンス

  • 腕立て伏せ、腹筋、スクワット

  • ヨガ

介入研究はこれから

ぜひ、日常生活に取り入れてみたいものです。

ただし、ここには注意が必要です。

筋トレで死亡や疾患発症が少なくなった、という介入効果を検討した研究はまだありません
実際の筋トレによる効果がどの程度になるのか、検証する研究が待たれます。

筋トレのエビデンス

  • 筋トレで身体機能が向上することは介入研究で確認されている

  • 観察研究から、筋トレ習慣で総死亡が少なく(Jカーブ)、がん死亡・がん発症、心血管疾患発症、糖尿病発症が少ない

  • 死亡や疾病予防効果については介入研究が必要

参考文献

Momma H, Kawakami R, Honda T, Sawada SS. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022 Jul;56(13):755-763. doi: 10.1136/bjsports-2021-105061. Epub 2022 Feb 28. PMID: 35228201; PMCID: PMC9209691.

World Health Organization. Physical activity (October 5, 2022)

Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotion. How much physical activity do adults need? (June 2, 2022)

National Health Service. How to improve your strength and flexibility. (November 18, 2022)

※情報収集・文章作成・画像生成にAIを活用しています。

■ 編集長
byc (bycomet) Editor, Director & Physician
2007年からブログやツイッターで活動を開始。ウェブマガジン「地域医療ジャーナル」(2015-2023年、有料会員数10,886人月)、オンラインコミュニティ「地域医療編集室」(2018-2022年、累積登録40人)を編集長として運営。2022年にはオンラインプラットフォーム「小さな医療」を開設。現在、登録会員数120人。
地域医療に携わる医師・編集長として、エビデンスに基づく医療の実践と情報発信をつづけています。

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