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在宅医療のタスクシェアは進むのか?

規制改革実施計画の閣議決定(2023.6.16)

在宅医療分野における医師・看護師のタスクシェアが内閣府で議論され、実施に踏み出しています。近い将来に実現されそうな未来像について、閣議決定の内容から注目ポイントを5つ挙げてみました。

Summary Task-sharing between doctors and nurses in the field of home healthcare has been discussed by the Cabinet Office and is now being implemented. The following are five key points of interest from the Cabinet decision on the future vision that is likely to be realised in the near future.

2023年6月16日、 『規制改革実施計画』が内閣府で閣議決定されました。このなかで、在宅医療における医療関係職種間のタスクシェアに関する内容がありますので、一部抜粋引用して確認します。

在宅領域など地域医療における医師―看護師のタスクシェア

a 厚生労働省は、高い知識や技術を持つ看護師が在宅領域など地域医療において、多くは慢性疾患を持つ患者の生活に立脚した健康管理や予防に、その能力や専門性を発揮できる環境を整備し、患者、医師の負担を軽減するため以下の措置を講ずる。

① 厚生労働省は、在宅医療において、患者に対し適時に適切な医療が行われることを確保する観点から、看護師が医師の包括的指示を受けて行い得る業務を明確化するため、現場のニーズを踏まえて、包括的指示の例を示す。包括的指示の例を作成するに当たっては、在宅療養者の症状変化に対して医師と看護師の適切な連携の下に、既に提供されている薬剤の使用、検査、処置(抜糸抜鈎等)等の実施を妨げることがないよう留意するものとする。

② 在宅医療など地域医療の現場において、虚弱高齢者に対する生活評価(入浴等)、認知機能評価、生活習慣病患者に対する指導等については、看護師限りで実施可能な行為の範囲が不明確であり、結果として医師に都度確認があるため、医師、看護師の双方にとって負担となっているとの指摘があることを踏まえ、適切な連携の下に円滑に対応されている具体例を示す。なお、具体例の提示に当たっては、状態変化等を踏まえた必要時の医師への報告や相談を妨げることなく、また、該当具体例以外を看護師限りで行ってはならないと誤認されないよう留意するものとする。

令和5年度措置

b 厚生労働省は、現行の特定行為研修修了者の活躍の場が大病院に偏っているとの指摘を踏まえ、特に地域医療(地域の小規模医療機関での外来看護や訪問看護など)で活躍可能な特定行為研修修了者の養成を促進し、医師不足が顕著な地域を始めとする各地でのケアの質を維持するため以下の措置を講ずる。

① 現行の特定行為研修の受講に要する時間と費用は、一般の看護師や医療機関にとっては負担が重く、普及は現実的ではないとの調査結果が示された。特定行為研修の時間数は、現在対象となっている特定行為を実施するための実践的かつ高度な理解力、思考力、判断力を身につけるために必要な内容であるが、看護師によっては既にこうした能力を備えている場合もあることから、その全部又は一部を、国の関与の下、講義履修などのプロセス評価のみならず、現場におけるアウトカム評価で代替することを可能とし、より多くの看護師が積極的に挑戦可能なものとする。あわせて、アウトカム評価が困難な部分については、短期集中型ではなく、看護師の日常業務の空き時間での長期にわたる研修までの間措置を可能とし、あわせて、オンライン研修の活用を進める。

② 実務上、特定行為の実施に必要な手順書が医師から必ずしも円滑に発行されない実態を踏まえ、関係団体の協力も得ながら医師に対し、手順書の理解促進のための周知・広報を図る。また、手順書を発行する医師の負担を軽減するため、医師が簡易に作成できる様式例の検討や看護師の裁量をより拡大するなど、現在の標準的な手順書例を改定する。

令和5年度検討開始、遅くとも令和6年度措置

③ 特定行為(診療の補助)について、その運用状況と地域医療におけるニーズを現場の医師及び看護師等から把握し、特定行為の拡充について検討する。

(前段)令和5年度 措置、(後段)令和6年度検討開始、 令和7年度結論

c 厚生労働省は、上記各措置を円滑に実施しつつ、①地域の在宅患者に対して最適なタイミングで必要な医療が提供できないため患者が不利益を被る具体的状況や②そのような具体的状況において医師、看護師が実際に果たしている役割や課題を令和6年度及び7年度に調査し、更なる医師、看護師間でのタスクシェアを推進するための措置について検討する。その際、限定された範囲で診療行為の一部を実施可能な国家資格であるナース・プラクティショナー制度を導入する要望に対して様々な指摘があったことを適切に踏まえるものとする。上記検討の間においても、離島・へき地等において特区制度を活用した実証の提案があった場合は、その結果も踏まえて所要の対応を行う。

(前段)令和6年度及び令和7年度措置、(中段)令和7年度結論、 (後段)令和7年度までの間措置

まとめます。

在宅医療分野における医師・看護師のタスクシェアが内閣府で議論され、実施に踏み出しています。近い将来に実現されそうな未来像について、閣議決定の内容から注目ポイントを5つ挙げてみました。

  1. 看護師が医師の包括的指示を受けて行い得る業務が明確化される。

  2. 看護師限りで実施可能な行為の範囲の具体例が示される。

  3. 特定行為研修は現場におけるアウトカム評価で代替できるようになる。

  4. 特定行為が拡充される。

  5. 限定された範囲で診療行為の一部を実施可能な国家資格であるナース・プラクティショナー制度の導入については検討する。

参考文献

内閣府. 『規制改革実施計画』(令和5年6月16日閣議決定)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/p_index.html
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/program/230616/01_program.pdf

■ 編集長
byc (bycomet) Editor, Director & Physician
2007年からブログやツイッターで活動を開始。ウェブマガジン「地域医療ジャーナル」(2015-2023年、有料会員数10,886人月)、オンラインコミュニティ「地域医療編集室」(2018-2022年、累積登録40人)を編集長として運営。2022年にはオンラインプラットフォーム「小さな医療」を開設。現在、登録会員数120人。
地域医療に携わる医師・編集長として、エビデンスに基づく医療の実践と情報発信をつづけています。

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