クリプトのマスアダプションについて考えていくうちに、非常に少額の資産においてのみ成り立つマーケットがありそうなことに気がつきました。これをHypercasual Financeと呼ぶことにします。
Hypercasual Financeの定義
個人にとって「無くなっても良い」もしくは「誰かにあげてもよい」と思える額の資産で実行されるサービス
(だいたい$10未満の資産額が想定される)
Hypercasual Financeの特徴
見返りが約束されない資金の提供が行われる
寄付・おごり・賭けなど
TVLではなくユーザ数やソーシャルグラフがネットワーク効果の要素になる
少額であるため、参加可能ユーザの裾野が広がる
Hypercasual Financeの対象となるうるサービス
Tipping
ただのチップも含むが、例えば毎朝の挨拶の代わりにtipを行う習慣や、普段の生活において友達に感謝の気持ちを伝えるためのtipなど、より生活に根付いたtippingがあっても良いと思う。
tipする側は少額のtipをdepositし、メッセージが添えられたNFTを相手に送る。NFTを受け取った側はそのNFTを使ってtipをclaimする。といったように、直接tipを送るのではなくあえてエモーショナルな要素を追加するtippingがあってもよい。
友達間のレンディング
友達の間における信頼をベースに行われるレンディング。最悪の場合、返ってこないケースもあり得る。
コーヒーや食事、NFTなどの奢り・引換券
コーヒーやその他のものと引き換えられるチケットを友人に送付するサービス
少額ベッティング
友達間で行われる、少額のベッティング。例えばその日あるサッカーのゲームでどっちのチームが勝つか少額賭けるなど。オラクルなどは不要で、参加者の間の投票によって結果が決まり、資金の分配はコントラクトによって実行される。
ほしい物リスト
欲しいものリストを共有し、誰かに買ってもらうサービス
マスキングポスト
文字や写真の一部を隠して(マスキング)ポストできる。閲覧者は少額の決済によってそのマスクされた部分を見ることができる。
Q&A
質問に対して回答を投稿できる。回答は少額の決済によって閲覧できる。
Micro Airdrop
オンチェーン上の任意のアクションを実行することによって非常に少額のエアドロップを受け取ることができるサービス。該当アクションのガス代や手数料より小さい額であることによってシビルを防ぐことができる。
既存でHypercasual Financeに該当するサービス
zora
Moshicam
Checkin
Gitcoin
Hypercasual Financeの合理性
現在L2のガス代が非常に安くなっており、1Txあたり$0.01以下で実行できる。それにより非常に少額の決済が実行できるようになった。これにより少額で実行できdAppsを作り、世界における貧困層や資産を持たない若者にリーチすることができる。これは世界におけるマス層であり、彼らをターゲットにすることでマスアダプションへと繋げることができる。
また、Hypercasual Financeのもう一つのメリットとしてオンボーディングの問題を解決できる。これまではクリプトを始めるためには取引所にアカウントを開設しそれなりの額のクリプトを購入する必要があった。またはスマホウォレットに搭載されているクレカ決済でのオンランプなど。しかし、これは新規ユーザにとって大きなハードルであり実際にそのパスによってオンボードしているユーザは限られていると思われる。Hypercasual Financeではgiveの活動が気軽に行われるため、新規ユーザはクリプトを手に入れるために自分の資産を売り払う必要がない。誰でもできるポストや、友達への挨拶、普段の活動をベースにクリプトを手に入れることができるため簡単にオンボードが可能になる。X to Earnをより少額に民主化したものと考えても良いかもしれない。
最後に
他にもHypercasual Financeに付随した現象やサービスを考えているが、読んでいる人にバイアスをかけないためにも一旦ここまでにしておこうと思います。
“非常に少額のDeFi”という市場を考えると、TVLではなくソーシャルの要素が強くなるという現象が起こり、それによって新たなデザインスペースが切り開かれるそうだな、と思ったことだけ一旦ここに記しておきます。
この件について一緒に議論してくれた yukiくん(https://x.com/yukiw_eth)に感謝です。